羽毛布団におけるダウンパワーとは

ダウンパワーとは、羽毛がどれだけ膨らむ力を持っているかを数値化したもので、単位は「dp」で表されます。この数値は、布団に詰めた状態を想定し、30gの羽毛に重さを加えたときの1gあたりの体積を算出した値です(具体的な測定方法は後述します)。

羽毛布団の暖かさのレベルは、体から発せられる熱を布団内部にできた空気層にどれだけ保持できるかで決まります。基本的に、空気層が厚いほど、より多くの熱を蓄えられるため、ダウンパワーの値が大きいほど、羽毛布団の暖かさが高まります。

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ただし、羽毛の種類(ダックやグース)によってダウンボールの構造が異なるため、同じダウンパワーでも暖かさに違いが生じる場合があります。

このページでは、羽毛布団を選ぶ際のダウンパワーの基礎知識と意外な盲点、さらには信頼性を見極めるポイントについて、専門家の視点で分かりやすく解説します。

目次

  1. ダウンパワーの測定方法
  2. ダウンパワーと布団の暖かさ
  3. ダウンパワーと羽毛の種類
  4. ダウンパワーと羽毛布団の耐久性
  5. ダウンパワーの信頼性の見極め
  6. まとめ

ダウンパワーの測定方法

ダウンパワーの測定は、日本工業規格(JIS L 1903)で規定されるダウンパワー測定法に基づいて行われます。具体的には、30gの羽毛を直径29cmの円筒に入れ、その上から94.3gの円盤の自重で押し下げます。その後、2分経過した時点で、底から円盤までの高さを測定し、1gあたりの体積を計算します。この測定を3回行い、その平均値をダウンパワーとして採用します。

算出方法

円筒の体積は、以下の公式で計算されます。

半径 × 半径 × 円周率(π) × 高さ

たとえば、ダウンパワーが440dpの場合、加重後の高さは20cmとなり、1gあたりの体積は30分の1の値になります(下図を参照)。440dpとは、加圧された1gのダウンの体積が440mlあることを意味しています。

440dp測定イメージ

円盤で加重する理由

円盤を用いて加重するのは、羽毛が布団に詰められたときの状態を再現するためです。試験では、羽毛の体積が加重されていない状態と比較して半分以下に圧縮されるため、そのため、布団内部の空気層の形成を評価する重要な指標となります。

ダウンパワーと羽毛布団の暖かさ

羽毛布団の暖かさは、布団の厚み(ボリューム)に比例します。この厚みは、羽毛の膨らむ力(ダウンパワー)や充填量によって決まります。ダウンパワーが高いほど、少ない充填量でも十分な厚みが得られ、そのため、軽くて暖かい羽毛布団を作ることができます。

また、羽毛のダウン率(羽毛全体に占めるダウンの割合)が高いほど、ダウンパワーも高くなり、布団の暖かさや軽さが向上します。しかし、羽毛の種類によって保温力に差があるため、ダウンパワーだけで暖かさを完全に判断することはできません。羽毛の種類(ダックやグース)、ダウンパワー、ダウン率、羽毛の充填量を総合的に比較することが重要です。

さらに、羽毛同士が絡む特性の有無、側生地の蓄熱特性、キルト構造なども羽毛布団の暖かさに影響を与えます。これらの要素を考慮に入れることで、より正確に暖かさを判断できます。

ダウンパワーと羽毛の種類

ダウンボールの大きさは、基本的にダウンパワーと保温力に基本的に比例します。しかし、アイダーダックのようにダウンボールが絡みやすい「スティッキーダウン」は、膨らみにくい(かさ高が出にくい)特徴があります。

同じダウンパワーでも、ダックとグースのダウンを比較すると、ダックの保温力は低くなります。これは、ダックのダウンボールの羽枝が太くて張りがあり、ダウンパワーを測定すると、実際の保温力よりも高い値が出ることが多いからです。また、ダックのダウンボールは内部の密度が低いため、熱が逃げやすいという特徴があります。これに対して、グースのダウンは密度が高く、熱を逃がしにくいため、より高い保温力を発揮します。

ダウンパワーを比較する際は、羽毛の種類(ダックとグース)によるダウンボールの構造の違いも考慮する必要があります。

ダックとグースのダウンボールの構造イメージ
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ダウンパワーと羽毛布団の耐久性

羽毛布団の耐久性を評価する際、ダウンパワーは非常に重要な要素となります。

羽毛布団の暖かさは、布団内に作られる空気層によって左右されます。この空気層が効率的に熱を保持することで、布団全体の暖かさが保たれます。軽量かつ保温性に優れた羽毛布団を作るためには、羽毛1gあたりの体積が大きく、空気の流れを遮断する羽枝が密に生えた高品質な羽毛を使用することが必要です。

こうした特性があるため、ダウンパワーは羽毛のランクを判断する指標として採用されています。

ダウンパワーと羽毛布団の厚み・ボリューム

一般的に、ダウンパワーが高いほど羽毛布団のボリュームも増すと考えられがちですが、実際にはダウンパワーそのものが布団の厚さに強く影響を与えるわけではありません。布団の厚さやボリュームは、ダウンパワーだけでなく羽毛の充填量やキルト構造にも依存しています。

410dpと430dpの羽毛布団のボリュームを比較した画像

ダウンパワーが低い羽毛布団では、羽毛の充填量を増やすことで厚みを補います。たとえば、410dpと430dpの羽毛布団を比較すると、使用当初はボリュームの差はほとんどありません。しかし、数年間使用するとダウンパワーの差が徐々に現れ、布団の耐久性に違いが出てきます。

ダウンパワーと耐久性

羽毛布団のダウンパワーは使用とともに低下しますが、元の数値が高いほど低下後も保温力を維持しやすく、長期間快適に使用できます。

例えば、10年で30dp低下した場合、430dpの布団は400dpを維持し、新品時の400dp布団と同等の保温力を保ちます。一方、400dpの布団は370dpに低下し、寒さを感じやすくなります。この差が耐久性の違いを生みます。

ダウンパワーと耐久性の関係図

また、羽毛の産地(飼育環境の湿度)も耐久性に影響し、一般的にヨーロッパ産の羽毛はアジア産より耐久性が高いとされています。

まとめ

ダウンパワーは羽毛布団の暖かさだけでなく、耐久性にも関わる重要な要素です。高いダウンパワーの羽毛を選ぶことで、軽くて暖かく、長年快適に使える布団を手に入れられます。さらに、産地にも注目することで、より長持ちする製品を選べます。

ダウンパワーの信頼性の見極め

羽毛布団選びで重要なのが「ダウンパワー」です。しかし、過去には偽装問題もあり、信頼性の確認が不可欠です。ここでは、ダウンパワーの信頼性を見極めるポイントを解説します。

ダウンパワー値を確認する方法

羽毛布団にはメーカーのダウンパワー値を表示したラベルが付いています。また、日本羽毛製品協同組合(日羽協)の「ゴールドラベル」が付いた製品は、これによってダウンパワー値が以下の4段階で示されています。

ダウンパワー値を示す添付ラベルと日羽協の4種類のゴールドラベル

日羽協のゴールドラベル(ダウンパワー基準)

  • エクセルゴールドラベル:440dp以上の羽毛は、冷え性の方や寒冷地にも対応できる冬用羽毛布団に適しています。軽量で高保温性を求める場合にも最適。
  • ロイヤルゴールドラベル:400dp以上の羽毛は、標準的な保温性能があり、快適な寝心地を求める方におすすめ。室温に応じた充填量が必要です。
  • プレミアムゴールドラベル:350dp以上の羽毛は、肌掛け布団や合い掛け布団に適した羽毛品質です。冬用羽毛布団として使用する場合は、室温15℃以上の環境を推奨します。
  • エクセレントゴールドラベル:300dp以上の羽毛は、夏用のダウンケットとしての使用以外はおすすめできません。羽毛特有のニオイが気になる可能性があります。

ゴールドラベル付き製品は、一定の品質基準を満たしていると考えられます。

適正な充填量を確認

ダウンパワー値は保温性に大きく影響しますが、布団の充填量も重要なポイントです。適正な充填量は、ダウンの種類やダウンパワー値によって異なります。例えば、シングルサイズの場合、以下が目安となります(ダブルサイズは約1.4倍)。

  • 90%・400dp未満(ダック):1.4~1.5kg
  • 90%・400dp以上(グース):1.2~1.3kg
  • 93%・440dp以上(グース・マザーグース):1.2kg
  • 95%・450dp以上(マザーグース):1.0~1.1kg

適正量から大きく外れる場合、品質に疑問を持つ必要があります。100g程度の増量は問題ありませんが、過剰な充填には注意しましょう。

ラベルと品質の信頼性の関係

日羽協は経済産業省の認可を受けた団体で、ラベル付き製品は基本的な信頼性を備えています。しかし、過去には品質不一致で退会したメーカーもあるため、ラベルだけで判断せず総合的にチェックしましょう。

西川の独自基準について

西川株式会社の羽毛布団の中には、基本的に日羽協ラベルが付いてなく、またダウンパワー表示をしていない製品もあります。しかし、西川は独自の厳しい品質基準を設けており、以下のような基準をクリアしています。

  • ダック:340以上
  • グース:360以上
  • マザーグース:430以上

メーカーの信頼度

同じダウンパワー値でも、30余年羽毛布団に触れてきた経験ではメーカーによって多少ボリューム感が異なります。メーカーの信頼度もチェックする必要があります。

高ダウンパワーで低価格

ダウンパワー値が高いにもかかわらず、極端に安価な製品には注意が必要です。品質に問題がある可能性があるため、慎重に選びましょう。

まとめ

羽毛布団を選ぶ際は、ダウンパワー値・充填量・ラベルの有無を確認しましょう。特に、グースやマザーグースの羽毛は保温力が高く、長持ちする傾向にあります。ただし、極端に安価なものは品質を疑うべきです。

また、ダウンパワーは布団の温度調節機能や耐久性とも関係があるため、信頼できるメーカーの製品を選ぶことが大切です。同じダウンパワーでも、ダックよりグースの方が保温力に優れます。

価格だけで判断せず、品質や信頼性を基準に快適で長持ちする羽毛布団を選びましょう!

筆者:野口 英輝

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