羽毛布団のランクを知るためには、羽毛・側生地・キルトの指標を比較して羽毛布団を選ぶ方法が基本です。そのなから羽毛品質の指標の歴史は、ポピュラーなものでは産地とかダウン率に始まりダウン率の欠点を補完するダウンパワー(かさ高)が出現してきました。
そしてダウンパワーが同じでも耐久性が異なる問題を解決するために「かさ高性の圧縮回復性試験」ができました。
羽毛の新たな品質基準の回復かさ高
かさ高性の圧縮回復性試験は簡単に言うと文字通り圧縮された羽毛の「かさ高」がどれだけ「回復」するかを表した基準です。初めにどの様な試験なのかを説明します。
- JIS L 1903のダウンパワーの測定をします。
- その後、同測定装置の荷重用円盤に1000gの重りを乗せ圧縮して2分後に「圧縮かさ高」を測定する。
- 荷重用円盤を持ち上げて4分間負荷のない状態にする。
- 1000gの重りを取り除き再度荷重用円盤(94.3g)だけを降下させ「回復かさ高」を計測する。
かさ高性の圧縮回復性試験が導入された背景と目的は何かについて解説いたします。
回復かさ高が必要な理由
羽毛の品質を判断するのにダウン率・ダウンパワー等では計りきれない品質差があるため新基準として回復かさ高が導入されたことは間違いありません。
回復かさ高を測定する前にダウンパワー試験を行っていることから、ダウンパワーを補完する目的の試験であることが解ります。
羽毛は強く圧縮されると完全には元の膨らみに回復しないため、ダウンパワーだけでは本来の羽毛品質が解らないためかさ高性の圧縮回復性試験が導入されました。
羽毛布団を実際に使用すると寝返りなどをすると羽毛30gに1094.3g以上の荷重がされます。この様な使用条件を想定するとダウンパワーだけで羽毛の膨らむ力を判断することは難しいと言えます。
確かにダウンパワー試験は初期の何も負荷が無い状態であるのに対して、「かさ高性の圧縮回復性試験」はより現実的な状況に近い試験なので羽毛の真の実力が解ります。
日羽協がこの試験を導入したのは2018年3月ですが、この前年の2017年にハンガリーのFBZ社(世界最大級の羽毛精毛会社)にて、ダウンパワーだけでは羽毛の真の品質は判断できない旨の説明を受けました。
その理由は同じグースの鳥種ゴールド種で同じダウンパワーでも羽毛の産地の違いにより布団のヘタリ具合に差があり、この違いを同社ではリカバーリングパワー(コシの強さ)の差だと説明をしていた記憶があります。
更に同社のCEOは、この件について日本繊維製品品質技術センターとも情報交換をしている旨の説明をされていました。
かさ高性の圧縮回復性試験の目的
耐久消費材の羽毛布団では、使用期間が長いためヘタリ具合は耐久性の違いであり購入時の判断材料になります。
羽毛の真の品質を知るためには、羽毛の「コシの強さ」回復力を数値化する必要があります。かさ高性の圧縮回復性試験の目的はズバリ「羽毛のコシの強さ」を知るための試験と言えます。
ただし課題が無いわけではありません。羽毛同士が絡み合うスティッキーダウンの場合は、この試験で正しく羽毛の真の実力が計測できるか?との疑問が残ります。
羽毛同士が絡むため強く圧縮すると復元しにくいため真の品質より低い試験結果になる可能性は大です。
かさ高性の圧縮回復性試験が羽毛の特性に関係なく、羽毛の耐久性が解る試験に進化することを期待します。
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