羽毛の種類と品質を見分ける
羽毛布団の品質は、基本的に中身の羽毛の種類と各種指標に比例します。しかし消費者の方にとって羽毛の品質指標の違いを、品質表示票、添付ラベルの数値や業界用語で理解することはいささか骨が折れます。
そこで羽毛の品質を見分ける基本的な方法を、消費者の方が見逃しがちな情報(注意点)と合わせて案内します。
目次
羽毛とは
羽毛はダウンとも呼ばれています。羽毛は写真左の様に立体的(ボール状)に羽枝をひろげたダウンボールと、写真右の様に平面的な小さな羽根のフェザーと呼ばれるものを含みます。
このダウンとフェザーの割合においてダウンの割合のことがダウン率です。ちなみに羽毛は陸鳥にはありません。
羽毛の中綿としての人気
ふとんの中身には、もめん綿、化学繊維綿、ウール、シルク、そして羽毛などがあります。各素材毎に特徴があり保温力、温度調整機能が異なります。素材の中でも羽毛が軽くて保温力・温度調整機能に優れた空気層を作るので人気があります。
羽毛の空気層
羽毛の品質により作ることができる空気層の体積に差があります。また羽枝の開閉により空気の対流をコントロールする機能にも差があります。この差はフェザーではなく後で説明する羽毛の大きさと構造の違いによるものです。
羽毛の品質差の要因
羽毛の品質差は何によりできるのか?基本的にはダウンが採取される鳥の種類と採取後の精毛処理により差ができます。具体的には、ダウンボールの大きさ、羽枝の密生度、ダウン率、洗浄度の違いです。
鳥の種類とダウンボールの違い
羽毛布団に使われているダウンの鳥種はダックとグースとマザーグースです。これらのダウンボールの大きさと構造(羽枝の密度と太さ)に違いがあります。各々のダウンボールを下図にイメージ化しました。
ダウンボールは、大きい方がより空気(熱)を内包して羽枝が密な方が空気の流れをコントロールし易い特徴があります。下図はダックとマザーグースを含むグースのダウンボールを表しています。
ダックとグースとマザーグースの順にダウンボールが大きく保温力に優れ羽枝が密であり温度調整機能にも優れています。
ダックの特徴
ダックダウンはグースと比較するとダウンボールが小さく、中心の核から放射線状にでている羽枝が太くて張りがある。その為ダウンボールがふくらむ力は大きくダウンパー値が出やすい傾向があります。
更に羽枝に付いている小羽枝の付き方が、図の赤丸のところの中心部に少なく先端部に集まる特徴があります。その為中心部が空洞化して保温力が低くなっています。
グースの特徴
ダックと比較すると羽毛が大きく、中心の核から放射線状にでている羽枝が細くてしなやかです。更に羽枝付いている小羽枝の付き方もまんべんなく付いており、羽毛の中心部もダックと比べると密で保温力と温度調整機能に優れます。
マザーグースの特徴
通常のグースと比較すると羽毛が更に大きく、中心の核から放射線状にでている羽枝の本数も多くなります。また核も大きくなり耐久性に優れています。中心部も通常のグースに比べ更に密な状態でさらに保温力と温度調整機能に優れます。
布団の中の空気層は熱を蓄えたり放出したりして、身体と外気の間で断熱材のような働きをしています。空気層の空気の流れを小さくすることで熱は蓄えるられます。羽毛内部の隙間を密にして空気の流れを抑え保温しています。
羽毛内部の隙間の密度とは、羽枝の本数と長さと小羽枝の付き方により差が出ます。ダックの密度は低くグースが密であり、この違いが保温力の差として表れます。隙間の密度は小羽枝の開閉でも調整ができ、この働きにより温度調節がされています。
ダウンの保温を体感
おにぎりを握る様に手を合わせて、手の中の温かい空気(熱)の移動を遮断するように指の隙間を密に閉じ10秒お待ち下さい。
その後、指の隙間を開けると『冷やっと』放熱したのがわかります。
同様の事を羽毛は温度変化に反応して羽枝の隙間を開閉します。
グースとダックのダウン品質
世界最大級の羽毛精毛会社であるFBZ社のCEOより「ダウンは肉の副産物である。1羽の鳥において羽毛と肉の価値の比率は、ダックダウン3%でグースダウン6%」との説明を受けました。この説明はダックとグースの羽毛の人気度・品質の違いを表していると思います。
この数値を知るとダックダウンは低価格のふとんを作るためのグースダウンの代替え品?のように感じます。グースダウンの羽毛布団の方が羽毛掛け布団の本物の寝心地であると感じます。
羽毛の品質基準
羽毛布団の品質は基本的に羽毛品質により解るといっても間違いではありません。その羽毛品質を表しいてるのが品質表示票です。
羽毛の品質ランクは、水鳥の種類、ダウン率、ダウンパワー、洗浄度により分けられます。
ダウン率と鳥種は品質表示表に記載されています。ダウンパワーと洗浄度の記載はなく添付ラベルで表されます。
羽毛はダウン率が高いほうが良い羽毛ですが、この比率はダウンとフェザーの比率だけを表したものであり、ダウンボールの大きさとか密生度を表す基準ではありません。未成熟なダウンボールも含まれています。
ダウン率の欠点を補うのがダウンパワーであり、一定条件下で加重された羽毛1グラム体積を表したものであり単位はdpで表されます。このダウンパワーにも欠点があり同じダウンパワーでも飼育条件により耐久性に違いがあります。
この二つの値が低い場合は増量して保温力を補います。
羽毛の品質の違いは、採取される水鳥の種の違いによりダウンボール構造の違いがあるためダックかグースか鳥種の違いも確認する必要があります。
おすすめはマザーグースの羽毛布団ですが、400dp93%以上のグースを使用した信頼できるメーカー製であればまずは安心できます。
羽毛の品質は、ダウンの鳥の種類・ダウン率・ダウンパワー・洗浄度を見れば判定できますが、羽毛布団の保温力はダウンの充填量によって違いがでます。品質が低いものは多くいれる傾向です。
充填量の目安は、シングルサイズで1.2kg、ダブルで1.6kg、クイーンで1.8kg-1.9kgです。ダウン品質により100g-200g程度の増減はします。充填量により羽毛布団の重さは変わります。ダウンの重さがふとんの総重量の約半分を占めます。
マザーグースとグースの違いについては下記のページを見比べて下さい。
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温かい2層、寝心地とコスパで選ぶとこの羽毛布団ハンガリー産シルバーグース93%410dp1.2...
日本羽毛製品協同組合(日羽協)は、羽毛製品で経済産業省の認可を受けた団体です。日羽協に加盟しているメーカーの製品では、ダウンの品質ランクに応じて組合が発行するプレミアムゴールド/ロイヤルゴールド/エクセルゴールド/ニューゴールドの4種類のラベルを添付することができます。
この画像は、山甚物産(株)の羽毛布団に添付されていたプレミアムゴールドラベルの裏面です。
440dpと日本羽毛製品協同組合の記載があります。No P-13195の下に(株)北陸ヤマジンと書かれているので、羽毛を充填した工場が解ります。
充填工場は関係会社以外にも外注先の場合もあります。この裏面のメーカー名の確認が重要です。
一般市場で販売されているゴールドラベル付き商品を購入し、その品質チェックを行い品質管理に努めています。品質基準に満たない製品が発見された場合には、工場への指導を行い、ゴールドラベルの発行停止など厳しい処置を講じています。
この様に消費者に安心してもらう活動をされていますが、過去の試買テストの結果では2年連続して問題があったメーカーもあると聞いています。やはり信頼できるメーカーか否かは重要です。
dp値のラベルの件でお問い合わせを頂く事がございます。たしかに日羽協以外のラベルも存在しますが、詳しい情報は製品を取り扱ったことがないため解りません。経済産業省の認可を受けた団体である日羽協のラベルが信頼性において訴求効果は上です。
アパレル業界では羽毛品質をフィルパワー値で現していますが、測定方法が異なるため混同しないようにして下さい。詳細はこちらのフィルパワーで説明します。
dp値を表すラベルは日羽協以外のラベルもあります。日羽協に加盟していないメーカーの羽毛布団に添付されているようです。
羽毛の産地
羽毛の産地としては、ポーランド/ハンガリー/ドイツ/フランス/ウクライナ/ロシア/中国/カナダ(順不同)などがあります。
産地と羽毛品質の関係は、寒い地域では鳥自身も生き抜くために、格段に保温力のある羽毛を必要としています。そのため冷寒地の羽毛の評価が高くなっています。
ただし、日本に輸入されている羽毛の約90%はアジア産です。ポーランド産は1~2%程度、ハンガリー産は5~6%程度です。
ポーランドとハンガリーでは産地によるダウンの優劣は付けられませんが、アジア産と比べると同じダウン率、ダウンパワーのグースにおいてはヨーロッパ産が耐久性において優れていると言われています。
具体的に言うと、耐久消費財である布団においては5年後10年後に違いが現れてくると言われています。飼育環境とくに湿度が関係していると言われています。
この違いを調べるため「かさ高性の圧縮回復性試験」がされています。ダウンパワーの欠点を補う試験でもあります。
羽毛の色
水鳥の鳥の色の違いによりダウン羽毛の色も異なりホワイト、シルバー、ブラウンなどがあります。羽毛布団の側生地の色が淡い場合、ブラウン系は透けて見えることがありますが、他の条件が同じであれば暖かさに差はありません。カバーを掛けるため問題はないと思います。
羽毛の洗浄度
品質管理の良いメーカーでは、選別や洗浄、殺菌面で高水準の処理をしています。この処理は、羽毛の品質を左右する大切な工程です。
日本の業界基準では、ダウンを洗った水の透明度が500mmになるまで洗浄をする事になっています。高級品には、業界基準値の2倍である1000mmまで洗浄したものを通常使用します。
1000mm洗浄をすることで、よりクリーンになり保温力と温度調節機能がアップします。しかしこのレベルまで洗浄しても、羽毛固有の臭いは極僅かに残ります。特に梅雨の時期になると、臭いが僅かにでることがあります。
世界有数の羽毛供給会社であるポーランドのアニメックス社とハンガリーのFBZ社においては、納入会社の基準に応じた洗浄をして納入しています。日本国内で洗浄する必要が無いレベルです。
羽毛の鳥の獣臭
ダウンの臭いは完全には取ることはできません。この臭いはダウンの核に含まれている油脂分でありこの油脂分を取り除くと耐久性が悪くなるためです。この油脂分は未成熟ダウンに多く含まれています。
現状では、食肉用として短期間に育てられたダックから採取された未成熟ダックダウンに臭いの問題が多く出ています。特に北京ダックに代表されるアジア産ダックに臭いの問題は多いようです。
羽毛の臭いと洗浄度
羽毛の臭いの主な原因である油脂分を取りすぎるとダウンボールが髪の枝毛のように割れやすくなります。鳥特有の獣臭は洗浄度より飼育期間に関係していて、食肉用に短期間で飼育された鳥のダウンに発生しています。
グースダウンであれば、臭いに特に敏感な人あるいは調香師のように臭覚が優れている方は臭いを感じるかもしれませんが、通常は気になるレベルではありません。
鳥種混合率の許容値
鳥種混合率とは、グースとの表示において、ダックが混入している比率のことを言います。本来あってはならないことですが、製造工程で誤って混入する場合も含め、混合が許される値です。
日羽協の鳥種混合率の許容値は10%以下です。西川(株)の基準はレギュラーグースで7%以下、マザーグースの場合は1%以下と厳しいものです。
ドイツなどEUの許容値は何と30%以下!30%は誤って混入する値ではありません。海外製の羽毛布団は、臭いの問題も多くダウンの品質に幅があるようです。
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ダウンパスについて
ダウンパスの表示をした羽毛布団を見かけます。動物愛護の精神に基づき作成された基準であり、飼育方法やダウンの採取方法において、動物に苦痛を与えないための方法を定めたものです。
当店の知りうる限り、レギュラーグースにおいては飼育方法、採取方法の両方の基準に適合していると思います。マザーグースは各国の独自の法律に基づき飼育採取されています。
ヘルシーダウンプログラムについて
羽毛に付着しているアレルゲン物質の残留数値を測定した結果において合格かどうかの判定をするシステムです。羽毛自体に対するアレルギー反応ではなく付着物によるアレルギー反応の目安になるシステムです。詳しくはこちらのヘルシーダウンプログラムのページをご覧ください。
羽毛布団の羽毛品質まとめ
羽毛品質は、採取された鳥の種類がダックかグースか、あるいはマザーグースなのかは重要です。鳥種を調べてから、ダウン率、ダウンパワー値を確認することでランクはおおよそ判断が付きます。
西川ブランドの羽毛布団には基本的にダウンパワーの表示がありません。他メーカーの製品と比較する際に役立つと思い「西川羽毛布団の選び方」のページを用意しました。
ただし、これらの鳥種、数値が信頼できるかどうかによります。重要な項目はメーカー名です。羽毛の品質を知っているのは羽毛を入れたメーカーです。
お勧めはマザーグースですが、ご予算に制限がある場合は、ダウン率90%ダウンパワー400dp以上で、シングルなら1.2kg-1.3kg程度の充填量なら合格点をつけられます。ただし信頼できるメーカー製であることが大前提です。
西川、山甚物産などは有名ですがどのメーカーが信頼出来るかどうかは消費者の方にとっては判らないと思います。こちらのおすすめメーカーでの羽毛布団の選び方のページをご覧下さい。
寝心地は、ダウン品質だけでなく側生地や内部キルト構造の違いも関係します。羽毛布団を総合的に評価した羽毛布団の選び方のヘージをご覧下さい。また下記の関連サイトも参考にして下さい。
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