羽毛布団のマザーグースダウン品質？ポーランドとハンガリーを比較

ポーランドとハンガリーの羽毛

羽毛布団の中身の羽毛(ダウン)の産地として有名なのが、北欧産の中でもポーランドとハンガリーです。このふたつの国は、国策事業として鳥の品種改良に努めてきた歴史と、水鳥を飼育するのに適した自然環境に恵まれているため、品質の良いダウンを産出することができています。

ポーランドとハンガリーのグースとダックの比率

ポーランド産とハンガリー産のダウンにおいて、グースとダックの比率は違います。ポーランドはグースをメインに飼育しています。ハンガリーではダックの飼育ウエイトが少し高く、更にポーランドと比べるとマザーグース・グース・ダックの飼育量も共に多いのが現状です。このことは下記の輸入量にも表れています。

ポーランドとハンガリーからの羽毛輸入量

ポーランドからのグース、ダックの原毛ダウンの輸入量は、全輸入量の１～２％程度です。ハンガリーからの輸入量は、総輸入量の５～６％程度です。

輸入量には、寝具以外の業界、例えばアパレル関係に使用されるものも含まれているので単純に割合を判断できませんが、市場にあるポーランド産やハンガリー産ダウンを充填したと表示している羽毛布団の割合は、輸入量と比べて多いのではと感じます。

両国の羽毛精毛会社

ポーランド産ダウンは、アニメックス(ANIMEX)社が有名な会社でありアニメックス社はグースダウンに限定されます。ANIMEX社はEU向けに一部ダックダウンを外部から調達をしているのが現状です。ANIMEX社から日本への輸出羽毛にはダックはないと聞いています。

ハンガリー産ダウンはFBZ社が有名です。ハンガリー産ダウンの供給量は世界最多であり、FBZ社はハンガリー産羽毛の70％をシェアしておりグースとダック両方出荷しています。

ポーランドのアニメックス(ANIMEX)社とハンガリーのFBZ社を訪問致しましたが、両社共に、農場から精毛にいたるまでの工程管理はＩＤ番号により、トレーサビリティ可能な厳格な管理をされています。

ポーランドとハンガリーの羽毛品質

両国の羽毛品質についての問合せで最も多いのが、「ポーランド産とハンガリー産の羽毛ではどちらが良いのか」というものです。どちらの産地の羽毛の品質も幅広く産地による品質の優劣は付けられません。

日本におけるお茶の産地による優劣が付けがたいのと似ています。産地国間での優劣ではなく産地国内での優劣はあるとご理解頂ければと思います。

ポーランドとハンガリー産羽毛の人気

ポーランド産とハンガリー産羽毛のどちらが人気があるかと言えばややポーランドでしょうか？日本人にとってはポーランドの知名度がやや高いからかもしれません。さらに後で説明するポーランド公認の「ホワイト・コーダ」のホワイトが日本人にとって好印象なのかもしれません。

しかし、西川ブランドの高級ローズ羽毛ふとんのフェヘールリバクラブ(FEHERLIBA CLUB)シリーズにはハンガリー産ダウンが使用されています。

両国の羽毛が人気があるのは、飼育環境とくに湿度が低くドライな環境下で育った鳥の羽毛は、湿度が高い地域で育てられた鳥の産もうと比べると同じダウンパワーでもドライな気候で飼育された鳥の羽毛が耐久性に優れているからでしょう。

この耐久性の違いを明らかにするために、日羽協により「かさ高性の圧縮回復性試験」が導入されています。

マザーグースでのポーランドとハンガリー違い

羽毛布団に使われているダウンにはマザーグース、グース、ダックとあるなかで、両国のダウン事情においてはポーランドのダック飼育の割合が低いため、両国に共通するグースダウンの中でも最もランクの高いマザーグースについて両国の事情を紹介します。

ポーランド産マザーグースとは

ポーランドのマザーグースと言えば、コウダ・ヴィエルカ国立動物科学研究所の存在を無くしては説明できません。同研究所において1962年デンマークから輸入されたホワイトグースが品種改良されポーランドの公認グース「ホワイト・コウダ種」が誕生しました。

コウダ・ヴィエルカ国立動物科学研究所の管理下にある親農場で孵化したグースから選別されたグースが、アニメックス社などと契約している農場にてマザーグースとして産卵用に飼育されています。

【マザー】ですが産卵用なので雄鳥も含まれています。飼育期間は4年になっています。

コウダ・ヴィエルカ国立動物科学研究所の管理下にある親農場で飼育されているグースは「グランドマザーグース」と呼ばれこの鳥のダウンは最高ランクです。

この様にマザーグースにはランクがあることをご理解下さい。

ハンガリー産マザーグースとは

ハンガリーのマザーグースの代表格はホワイト系のゴールド種があげられます。ただハンガリーでは羽毛の色はホワイト系だけで無くシルバー系のグースも存在しています。

ハンガリーのマザーグースはポーランドのコウダ・ヴィエルカ研究所の様な存在はなく、主にFBZ社(前進は国営テリンペット)においては優れたグースを選別してマザーグースとして飼育すると聞いています。

ポーランドとの違いはその飼育量が多くポーランドの2倍はあります。

ポーランド産とハンガリー産の羽毛布団

両国を代表する羽毛精毛メーカーであるアニメックス社とFBZ社のマザーグースダウンを充填した羽毛布団を紹介します。価格差は発注ロットと契約のタイミングにより差はありますがほぼ同クラスの製品です。

ポーランドとハンガリー産ダウンの実情

両国を代表する精毛会社2社はぞぞれの国においてのダウン供給シェアーは高いのは事実です。しかし2番手の3番手の会社も存在します。

ポーランドならアニメックス社とかハンガリーならFBZ社だと思い込まないことが羽毛布団を選びでは重要です。

両社を訪問した際に、飼育農場、採取工程、精毛工程の工場等を視察させて頂き、徹底した品質管理が行われていました。この品質管理なら両社のダウンの評価が高いのも理解はできます。

両社の厳格な品質管理が、ポーランドとハンガリーのダウン品質の評価を上げていると言っても過言ではありません。

しかし、市場にはポーランドあるいはハンガリー産のダウンを使用した格安の布団が存在しています。

例えば、「ダウンの産地として人気のポーランドのホワイトダックダウンを充填・・」とのセールストークは、アニメックス社のダウンではないと判断できます。

羽毛布団購入時には製品説明を精読することをオススメします。最低限必要な知識としては、ダウン品質の指標であるダウン率、ダウンパワーの知識です。

ポーランドとハンガリー産羽毛の区別

グースダウンとダックダウンの区別はつけられますが、ポーランド産かハンガリー産かの区別はつけられません。更に、ハンガリー産かロシア産なのかも区別はできません。

鳥の種をDNA鑑定すれば産地を追跡することもある程度できます。例えばポーランド産グースは、ほぼコーダ種であるとか、ハンガリー産グースにはゴールドグース種(ホワイトグース)などがあります。精毛後のダウンを見て品質の良し悪しは見極められても産地の区別は付けられません。

ダウンの産地よりもメーカーの信頼度

ポーランド産とハンガリー産の羽毛は定評がありますが品質ランクには幅があります。このことをふまえて産地国の確認をすることは意味があります。産地国が不明なものは偽装の文字が浮かんできます。

消費者の方が羽毛布団を買う際には、羽毛の産地をチェックする前にメーカー名をチェックすることをお勧めします。寝具店が仕入れる際には、メーカーの品質管理に対する姿勢を重要視しています。布団の製造工程において充填物の品質を知っているのはメーカーなのです。

ポーランド産とハンガリー産ダウンを充填した羽毛布団において、品質と充填量が同じならば、1層か２層かの内部構造が違っても、ケースから出して圧縮されていたダウンをほぐしてやれば、メーカーが異なっても同じようなボリュームを感じます。

しかし、信頼できないメーカーの布団の場合は、布団の端をもって振りダウンを解すとボリュームの出方で同じ条件のダウンでもパワー不足を感じます。

ポーランドとハンガリーのマザーグースダウンを充填した羽毛布団が素晴らしいのは事実ですが、やはり信頼できるメーカーの製品であることが条件であると思います。

ポーランド・ハンガリー産羽毛まとめ

ポーランド・ハンガリーは、ダウンの品種改良に努めてきた歴史と飼育環境に恵まれているため高評です。そのため両国での品質の優劣は付けられません。

しかしダウンは品質ランクに幅があります。羽毛布団を購入する際は産地国のチェックも必要ですが、信頼できるメーカーの羽毛布団を選ぶこともお勧め致します。

筆者:野口　英輝

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